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2018年10月24日

演劇集団アクト青山 『小西優司のWS「演技力」までの道のり』体験レポート

演劇集団アクト青山さんの主宰、小西優司さんのワークショップにお邪魔させていただきました!

このワークショップは演技経験は問わず、15歳以上の男女が対象で、演技力とは何かを考えるものでした。
参加者は合わせて14人。スタートし、まず軽い自己紹介をします。アクト青山さんの劇団員やレッスン生の方はじめ、再現ドラマなどに出演されている方、声優の卵など色々な方がいらっしゃいました。年齢も様々で、大学生から60代の方まで参加していました!
ディスカッションとディベート、それを踏まえて短い台本を読み合わるところまでを午前中に行いました。そして、午後には演技実習という流れで、一日を通し、終始柔らかい雰囲気で進んでいきました。
ワークショップに使われた台本の教材は、小西さんが書かれたもので、男女の出てくる1シーン。男が女に手紙で何か大切なことを告白する、といった場面で、読み方によりハッピーエンドにもアンハッピーエンドにも取れます。これがハッピーエンドだと思うか否か、がディスカッションで最初に出されたお題でした。結論から言うと、どちらでもいいのですが、その結論や理由をよりはっきり説明でき、客席まで伝えて感動させられる方を選ぶべき、とのことでした。そのために必要なのが演技力です。これには、役柄を理解し、表現する、という2つの過程があります。客席を感動させることが表現、そのための具体的で物理的な設定を考えることが理解だそうです。
次に、この場面での主人公は男女のどちらだと思うか、がテーマになりました。主役というのは最も情報量の多い人、または少ない人であることが多い、という目線でそれぞれが結論を考えます。ここまでで、この短い教材の中でも、終わり方がハッピーかアンハッピーか、主役が男か女か、という4通りの読み方ができる、ということを小西さんから示され、私は自分が何となくしか文章を追っておらず、何も考えていなかったんだ、ということに気が付きました。

そして、ここまでを踏まえ、本読みに入りました。本読みでは、参加者の中からランダムで小西さんが選んだ2人が打ち合わせなく文章を読みます。ハッピーか、アンハッピーか、終わり方で迷い、どちらとも取れずに終わってしまう組もありました。セリフを言うときは、いかにうまく言うかを考えるのではなく、実際に経験した感情をどれだけ乗せられるかを考える、と小西さんはおっしゃいました。
面白かった組で、打ち合わせなしでも、大きな借金の存在を夫が妻に告白する中年夫婦、に聞こえる組がありました。恋愛話の組が多い中、読み方次第でガラッと変わることに驚きました。その人の中から自然と出てくる、この組でのにじみ出る生活感、そういうものが個性であり、自分の個性を知り、読み方に自信を持つことは演技力にもつながっていくそうです。
また、打ち合わせなしでやるとはいえ、手紙を読む前の声音でハッピーかアンハッピーかわかると、手紙の意味がなくなってしまいます。現在は客席に推察や考察をさせる演出や舞台が多いですが、一行ほどの短い、簡潔な感想を客席が共有し、それに当てはまる記憶や感情をそれぞれが自分の中から持ってくる、そんな舞台が昔は多く、それを目指していくため、今回では手紙を読む前に声音で推測させるのは望ましくない、ということでした。
午後には、終わり方、主役がどちらかという4通りにざっと参加者を分け、その中で2人組を作り、軽く打ち合わせを行い、発表しました。同じ短い台本でも、組によって全然違う話になっていました。スタンダードな若い男女の別れ話に、キャリアウーマンにヘタレな男性からのプロポーズ、兄妹で戦争地域にカメラマンとして行ってしまうのを告白する、というものもありました。

小西さんが途中途中教えてくださったことですが、演技をするときは、大げさな行動から始め、最後にはこんな人いそう、と観客に思わせることを目指すと良いそうです。演技では自分の思う感情の7割くらいしか客席に伝わらないため、特に大げさに動かなくてはいけません。
また、歩き方ひとつとっても、感情が伝わってくる場合と、来ない場合があります。それらを考え、全組が発表したのち、若い男女の別れ話をしたペアが、ダメ出しをされながらもう一回発表をしていました。気を付けることが多く、何回もやり直していましたが、実際、なおしたものでは伝わってくるものが格段に多くなっていました!

最後に、感想を言い合いました。短い時間で、たくさんのことを話してくださったので、時間が足りない!という意見が多かったです。全体を通して濃い内容のものをやったので、私の頭もパンク状態でしたが、とても楽しい時間でした!

今回のワークショップの会場。

ワークショップ後、演劇集団アクト青山さんの主宰、小西さんにインタビューをさせて頂きました!ワークショップを開いた目的や、ワークショップ中に気になったことを詳しくお聞きしました。

―まず、このワークショップを開いた目的を教えてください!

観る人、教える人によって言うことが違うので、演じるという上で、すごく病んじゃう、悩んじゃう、迷宮入りしちゃう人がものすごいたくさんいて。そういう人たちが少しでもそこから解放されて、自分が本当は何になりたいか、どうやってたくさんの人とつながっていきたいか、感動って何だろうか、とかみたいなものを考えるようになってほしい。ワークショップに来る役者さんをまずは感動させてあげたいし、ここで感動した役者さんたちが、舞台の上でお客さんを感動させるようになってほしい。ただ文字にして教えるだけではだれも感動しないので。出来る限り役者さんの感動するワークショップを定期的にやりたいというのがあり、やっています。

―対象は演劇経験を問わず、となっていましたが、今回は経験豊富な方も多く、かなり濃い内容のワークショップだったと思います。初心者が多く来たとしても同じようなワークショップになったのでしょうか?

進行する速度は下がりますけど、言うべきこと、求めるものは基本的には同じです。初心者だろうが、50年やっていようが求められることは一緒なので。難易度があると、初心者は思っちゃうけど、難易度って、あるようでないんですよ。何年もやっている人も難しそうだったでしょ?(笑)初心者の人にとっても難しいし、何年やってても難しいんですよ。初めてやった人とずっとやっている人の違いって、お芝居の世界ではなかなかでないので。今日、課題が初めてなら、すべての人にとって、今日のワークショップは初心者と同じ。出来てるかどうかでいえば、話は変わっちゃうことはあるけど、それは、レッスンの現場である限り、そんな重要なことじゃないですよね。いかに同じ気持ちでチャレンジしてるか、どれだけのことを考えたり、アプローチしたりしようとしているか、という結果じゃなくてプロセスの部分で見ているので、それだけ見れば、初心者も経験者もそんなに差がないですね。

―ワークショップのホームページに、演技力に必要なものは説得力、影響力、表現力と書かれていたと思います。その中の影響力のところに書かれていた、「圧」というものをもう少し詳しく教えていただけますか?

思ったより参加した人が多くて、今日はそこまでは手が出なかったですね。役者さん同士が、たとえ3時間あんなに密に話し合わせても、お互いを本当にコミュニケーションする時間がにもなくて。言ってみれば、情報を交換し合ってしまうために、コミュニケーションが成り立たない。その結果として、相手がこう思ってるというのを感じ取る力まで話が進まなかったんですよね。やっぱり時間が足りないから、客席の感情を実現することだったり、相手役にこうだと思わせるための雰囲気だったり、圧だったりするものが、どうやったら出るかってところは教えきれない。みんなが同じテーマなり、同じ設定で競うならできるけど、今日の場合はいかに自由に役者さんに考えてもらって、自分たちの考えた設定でいかに生き生きお芝居するかっていう方へ上手く行っちゃった。もっとセオリー的なことを教えないといけないかと思ったら、アイデアだったり、お芝居について考えることの喜びだったりに内容が特化されちゃったので、ちょっと圧という部分はもう一つ触れられないまま終わったかなと。それ、僕がお手本を見せなかったから。見せれば、これが圧っていうものか、って言うのはあったかもしれないけど、今回はそんなに重要じゃないなと。

―圧というものは、演劇的理屈から来ると書かれていらっしゃいましたが、感情の動きとかを相手に伝えることによって、相手が受け取って動くと圧が生まれる、ということでしょうか?

その場合、圧があったことになりますね。役者さんでも、物語が発生するタイプの人としない人がいます。今日もちょっとあった人いたし、そういうの見るとただ見ててもワクワクする。要は、そういう力を才能って言います。その人が出てるだけで、物語がある様に見えると、お客さんってワクワクする。これが物語なんです、って説明されちゃうとつまらなくなるんだよね。これはすごい大事なものなんだけど、組み合わせとか、本人が持っているもので、なかなかでないこともある。物語が見てわかるってなると、そのお芝居がすごい面白くなる。物語を出そう、作ろう、としちゃうとつまんなくなっちゃうんだよね。お芝居を観る中で、この人が出てくると物語になる、見えるっていうのがきっとわかるようになると、お芝居を観る楽しみが変わるから。そういうのも本当はもうちょっとうまく教えていきたいなって思ったんだけど、そうするとやっぱり時間が足りないですね。

―ワークショップ中に、何度か、今は表現力が足りない人が多いとおっしゃっていましたが、演技力で一番大事なものは何でしょう?

なんだと思いましたか?(笑)根本的には、すごい難しいですけど、表現力、技術、魅力の3つだと思います。思わせる力が表現力。毎回確実にそのアプローチにする力が技術。それが当たり前にやっているように見える余裕のある人が魅力的。一生懸命っていうのは、魅力的じゃない。どんなに頑張って稽古しても、舞台の上ではさも当たり前に毎回行われるように見える方が魅力的。その魅力って、やっぱり演技力だと思う。苦痛を苦痛に見せない、努力を人に見せないことを含めて、この3つが演技力。今日も、魅力的でも技術が足りない人、技術的に高くても表現力にたどり着いてない人、本人にどうしても魅力がない人はいる。みんながみんな、3つとも持ってるわけじゃないから。持ってないものは勉強して生み出すしかないし、持っているものはどんどん伸ばした方がいい。こういう視点で、最後に自分と向き合うと、教えてほしいって気持ちに絶対なると思うんだ。教われば絶対変わるから。それだけ、外から入ってくる情報って表現の世界にはすごい重要なこと。それに気がついてくれるといいなって思う。本人が何を学びたいかをわからないのにレッスンに誘うのは単なる金儲けでしょ。だからレッスンに勧誘はしない。何を学ぶべきかっていうきっかけや、自分自身感動することを忘れている人たちに感動自体を思い出させてあげたい。そのためにワークショップをやってるし、それが、魅力や、技術、表現力に繋がっていくと言いなって気持ちです。

―演技をするときに理解するという過程と表現するという過程が必要とおっしゃっていましたが、表現するときに大切なことをもう一回教えて下さい!

自分がした理解、感想とできるだけ同じ、理想はそれより上の感動と理解をお客様にしてもらえるようにすること。そのためには、表現力が必要。結局、どんどん質が下がっていくのでは困るんだよね。作家さんが書いている文章より、演出家の理解の方が質が下がって、それより役者さんの理解の方が質が下がっている場合、作品って面白くない。作家さんが何かに感動して作品を作る。その書かれている作品に演出家が感動して作ろうとする。その演出家の作ろうとするものに役者さんが感動して…それがずっと、雪だるま式に大きくなって客席に届くのを理想としている。いかに自分のした理解と感動より大きいものを客席に届けるかっていうのは、理解とか説明とかだけでは大きくならないから表現力が必要。表現力っていうのはこの人が言っているのはこういうことかっていう想像力に由来するもの。

―最後に、ワークショップ中に料理に例えていらっしゃった、現在と昔の演劇の違いについて、もう少し詳しくお聞かせ下さい!

端的に説明すると、第二次世界大戦。戦後、世界中にもう出てない答えってなくなっちゃったのね。世界のほとんどの答えは出ちゃってる。世の中にありとあらゆる種類の物語や、音楽、歌は存在して、もうこの先すごい新しいものは出てこない。それを踏まえると、僕らがしている芸術活動は、ほぼ必ず借りものなのね。誰かが一回やったことがあるものに近いものをやっている。それ以上は、この成分が何ですかってことをクイズしちゃう方が、お客さんにとって新しいからみんなそうしてる。これは、何かのメタファーです、何かの例えです、の方が目新しい時代になってしまっている。でも本質はそうじゃなくて、何かの作品を見た時に本人にしかない物語に、ばっちり当てはまっている方が本当は感動が大きい。本人の記憶のどこかを呼び起こすためのイマジネーションである方が、芸術っていうのは素晴らしい。だけど、演劇はどうしても人がセリフをしゃべって説明しちゃうから、どこかつまらないものになってきていて、そのクイズになっちゃっている部分を、できるだけなくしたい。もっと圧倒的に一枚の絵や写真、記憶のようなものが、心に残るものを出来たら作れるようになりたい。そのためにいろんな役者さんが必要だし、勉強が必要だと思って、そんな大きい目的でワークショップやレッスン、稽古をやっているわけではないけど、そういうもののためにやっているのは事実かな。

今回のワークショップとインタビューは、とても勉強になりました!私はもともと観劇専門で、演じる側の世界についてまったく知らなかったので、今回少しでも触れることができ、興味深かったです。演劇を観る視点が変わったような気がします。お話にあったような、役者が出てくることで作られる物語、というものを感じられる観客を目指したい思いました。もし演じるということに悩んでいる方がいれば、是非今回のようなワークショップへの参加をお勧めしたいです。観る側でも多くの発見はありましたがそれ以上の収穫を得られること間違いなしです!

ワークショップの様子。

【今回取材したワークショップ】
小西優司のWS「演技力」までの道のり
期日:2018年8月28日(火)10:00~16:00(途中休憩あり)
場所:せんがわ劇場リハーサル室
費用:2,980円
応募資格:15歳以上の男女 ※演技経験不問