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2018年10月23日

第2回 観劇カフェ『八月納涼歌舞伎 第一部』レポート

前回に引き続き、7月から9月にかけて実施した高校生や学生のための観劇・劇評応援プロジェクト2018「観劇カフェ」の様子をお届けします。
第2回の今回は2018年8月23日(木)『八月納涼歌舞伎 第一部』観劇カフェです。

8月23日。『八月納涼歌舞伎 第一部』を題材に、田中綾乃先生(三重大学人文学部准教授、演劇評論家)にお越しいただいて、第2回観劇カフェを開催いたしました。
歌舞伎というと、「言葉が難しく、話の内容を楽しむことに苦戦するのではないか」と考えている方もいるのではないでしょうか?実際、今回の観劇カフェに参加した10名は、歌舞伎は少し堅く難しいイメージがあり、今まであまり触れてこなかったという方がほとんど。
しかし、今回の観劇カフェで感想や意見をディスカッション形式で自由に交換することで、そのような印象を払拭し、楽しみ方を学ぶことができました。

今回取り上げた『八月納涼歌舞伎 第一部』は、第一幕の「花魁草」(85分)、第二幕の「龍虎」(20分)、第三幕の「心中月夜星野屋」(50分)の3作品で構成されています。
『八月納涼歌舞伎』は、とにかく笑いのポイントが多いという点が印象的でした。それ故に、面白さを客席全体で共有している一体感を味わうことができました。歌舞伎独特の仕草や華やかな衣装も魅力的で、一見長く感じる上演時間もあっという間に過ぎてしまいました。

続いて、一~三幕それぞれのあらすじと参加者の方々の感想・意見をご紹介します。

一幕「花魁草」

≪あらすじ≫  
 安政大地震に襲われた江戸から逃げる途中で偶然出会った大部屋役者の幸太郎と女郎のお蝶は、百姓米之助に助けられ、一緒に暮らし始めます。お蝶は幸太郎に想いを寄せますが、お蝶には好きな男に裏切られ殺してしまった過去があるため、妻になることに踏み切れずにいました。そこへ、猿若町の座元勘左衛門や芝居茶屋の女将お栄がやってきて、幸太郎に芝居へ復帰することを勧めます。お蝶も一緒に行くという条件で二人は江戸へ向かいますが、お蝶は幸太郎の成功を願い、姿を消してしまいます。その後、幸太郎は役者として成功し、お蝶と暮らしていた家を訪ねますが、そこにお蝶の姿はなく、お蝶と一緒に暮らしていた時に植えた花魁草だけが咲いていました。

● 因縁・情愛の物語
● 物語の中で男女が同じ立場だったのが、昔の日本のイメージとは異なった。歌舞伎の中の女性は強くポジティブ。女性の積極性や情熱に注目した演目も多いということも伺った。
● 最後の橋の場面で全員がはけた後、お蝶だけが残るという演出が良かった。その後のお蝶が手ぬぐいを噛みながら泣く、“人形浄瑠璃”のような仕草が切なかった。

二幕「龍虎」

≪あらすじ≫
天の王者たる龍と地の覇者たる虎が、竹本、筝曲、尺八の演奏と共に激しく毛を振り立てて戦いますが、勝敗は決することなく、龍は天へ虎は洞窟へと去っていきます。

● 作品を“理解する”というより、“感じる”ことが出来た。
● 一幕と三幕は分かりやすい作品なので、間の二幕に「これはどういうことなのだろう?」と考える作品があるのが良かった。
● せり・毛振り・衣装の引き抜きなどの歌舞伎要素がたっぷりで、“イメージ通りの歌舞伎”という印象を持つ方が多かった。
● 重心を下のほうに置く、歌舞伎独特の身体の使い方がよく観察できた。
● 演者が実際の親子(松本幸四郎・市川染五郎)という事もあり、息がぴったりと合っていた。

三幕「心中月夜星野屋」

≪あらすじ≫
青物問屋星野屋の主人照蔵は、妻になるおたかの愛を試すため、相場で大損をしたと嘘をつき一緒に心中する話を持ち掛け、話のはずみでおたかも承諾してしまいます。後悔するおたかに母お熊の入れ知恵もあり、裏切られた照蔵だけが吾妻橋から飛び降りてしまい、おたかの本心を知った照蔵は幽霊のふりをして現れます。そして照蔵とおたか・お熊の怒涛の切り返し合戦が繰り広げられます。

● 落語の「星野屋」という噺がもととなっている。今年つくられたばかりの新作。
● 一幕で立方だった中村獅童が、三幕は女形として出演しており、演目だけではなく、役者に注目するという楽しみ方もあると学ぶことができた。

今回の観劇カフェは参加者のほとんどがその直前に観劇したため、「ここが面白かった!」という興奮や、「これはどういうことだったの?」という疑問を共有することができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。また、「劇場に入った際の外国人観光客の割合の多さに驚いた」という感想を持たれた方も多くいました。歌舞伎を観に来る外国人観光客は、日本独特の様式美・色彩美に惹かれる方が多いようで、三幕で使用されていた、場面転換を円滑に進めるための回り舞台(盆)はヨーロッパでも使用されているそうです。

最後に、歌舞伎はもっと気軽に楽しめるということを今回の観劇カフェで実感しました。観劇前、歌舞伎は堅く難しいものだと思っていましたが、客席が何度も笑いに包まれ、言葉も難なく理解でき、今まで抱いていたイメージが嘘のようでした。実際に、歌舞伎が始まった江戸時代は食事をしながら観るなど今よりも気軽に楽しまれていたそうです。
そして最近では『ワンピース歌舞伎』や、初音ミクが登場する『超歌舞伎』など、若者が親しみやすい新たな作品が上演されています。歴史のある作品を守っていくと同時に、常に新しいものを取り入れることが、世界に誇れる日本の伝統芸能である歌舞伎をさらに発展させるために必要なことなのだと分かりました。
今回学んだ、「次はここに注目してみよう!」といった新しい楽しみ方を、次の観劇に活かしていきたいと思います。

(文責:赤澤、吉枝)

講師の田中綾乃先生。撮影=NeSTA

参加者の皆さんもメモをとりながら真剣にお話をきいていました。撮影=NeSTA

【公演情報】
『八月納涼歌舞伎』
日程:2018年8月9日(木)~2018年8月27日(木)
会場:歌舞伎座
第一部/『花魁草』『龍虎』『心中月夜星野屋』
第二部/『東海道中膝栗毛』『雨乞其角』
第三部/『盟三五大切』(序幕・二幕目・大詰)