NeSTAロゴ

現役高校生・大学生による
舞台芸術情報サイト

2018年10月23日

第1回 観劇カフェ『BOAT』レポート

7月から9月にかけて実施した高校生や学生のための観劇・劇評応援プロジェクト2018「観劇カフェ」の様子をお届けします。
第1回は2018年7月22日(日)『BOAT』観劇カフェです。

今回の観劇カフェでは、7月16日から26日まで東京芸術劇場・プレイハウスで上演していた、マームとジプシーの藤田貴大さんの新作『BOAT』を取り扱いました。演劇ジャーナリストの徳永京子さんをゲストにお迎えしお話を伺うと共に、学生と大人の方合わせて13名の参加者の方々と『BOAT』について自由に意見を出し合い、さらに作品への理解を深めていきました。

カフェではまず徳永さんが参加者全員に舞台についての感想、印象を聞いていきました。

その中で繋がるテーマ、相反する意見を見つけながら更に深めていきました。

事前にこの作品を観たのですがその時、私の頭の中では”?”と”!”が無限ループしていました。作品の内容はもちろん演出にも多くの疑問が生まれたのです。

しかし、観劇カフェに参加したことで、作品や藤田さんについて詳しく知ることが出来ました。例えば、「リフレイン」という藤田さん独自の表現技法。目線を合わせなかったり、詩のようなセリフが繰り返され、それが段々と繋がっていく。この技法についても、どのような効果があるかが分かりました。考えさせるのをやめさせ、感情に訴えかける。そのためのリフレイン。徳永さんにお話を伺わなければ気が付かない効果でした。他にも最後の青柳いづみさん演じる除け者のセリフ。私はそのセリフの意味があまり分からなかったのですが、みなさんの意見を聞いているうちに新しい理解が生まれました。「劇場はもえた、客席も舞台もない。」このセリフは藤田さんの演劇人としての覚悟が込められていたのです。また、「もう繰り返さない。」これはリフレインという技法との決別を表していました。私はこの作品内での決別だと考えていましたが、実は藤田さんが今後の作品でしばらくリフレインを使わないという意味でした。これも自分だけでは気づけなかった点です。

そして今回最も盛り上がりを見せたのが、「この作品(特に詩的なセリフに)肯定派?否定派?」という議論です。自然と始まったこの議論。私は肯定派でしたが、否定派の方の意見にも共感できるものもありました。「大きなテーマを扱うには詩的なセリフだけでは足りないのでは?」という意見はとくに考えさせられました。確かに、戦争や部落差別、さらには国家のあり方までをも問う作品において詩的なセリフばかりでは刺さるものが少ないと感じたかもしれません。しかし、だからこそ心の底に訴えかけるものを感じるという人もいて、受け取り方に正解はないと実感しました。

話は「ストレートプレイで音楽を使うのに賛成か?反対か?」にまで広がり、あっというまに時間が経ってしまいました。

今回の観劇カフェを終えて、多くのことを得られました。専門家である徳永さんのお話を伺うことで広がり深まる知識、同じ作品を観た人たちと語り合うことで広がる視野。作品の見方も参加前とは変わり、作品の表面だけでなく奥にあるものも少し理解できたと思います。

最後になってしまいましたが、徳永さんが「観たものを言葉にする、文にすることが気持ちの良い作業だと知らない人が多い。」とおっしゃっていました。初めて観劇カフェに参加し、このことを改めて実感しました。是非みなさんも、観劇カフェに参加したり劇評を書くことで、言葉にする楽しさに触れてみてください。

(文責:見上)

【公演情報】
『BOAT』
日程:2018年7月16日(月・祝)~2018年7月26日(木)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
作・演出:藤田貴大(マームとジプシー)
出演:宮沢氷魚 青柳いづみ 豊田エリー 川崎ゆり子 佐々木美奈 長谷川洋子 石井亮介 尾野島慎太朗 辻本達也 中島広隆 波佐谷聡 船津健太 山本直寛 中嶋朋子