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現役高校生・大学生による
舞台芸術情報サイト

2016年4月1日

ロンドン旅行レポート

 2016年2月25日~3月1日にかけて、ロンドンへ観光旅行に行きました。今回はその旅行で訪れた名所のなかでも演劇に関わりのある場所についてレポしたいと思います。 まず旅行1日目、ヒースロー空港内で現在上演中の演劇をまとめた冊子を発見。2週間ごとに入れ替えられるというこの冊子、街のいたるところに置いてありました。そこからホテルまでの道(車で40分ほど)の間に眺めていると、なんとホテルの最寄り駅近くに劇場があることが分かり急遽観劇することに。演目はシェイクスピアの「真夏の夜の夢」。実は一度はロンドンで観てみたかった作品なのでワクワクしながらチケットを購入…… のはずが、思わぬところで早くも挫折を経験することになります。フロントのお兄さんの話すイギリス英語が聞き取れないのです。住所を聞かれているだけなのにaddressのaが訛っているので“ドレス”“ドレス”と言われているのかと軽くパニックに陥る私。もちろんイギリス英語の堅さは知っているつもりでしたが、まさかここまできついとは。前途多難、これからこの調子で大丈夫なのかな、と思いつつも何度か聞き返してなんとか理解して購入できました。席は一番安い15ポンドの最後列を取ったのですが、お客さんの入りが良くなかったようで客席で前方の席に変更してもらえました。客席は想像以上に格調高く、それでいて飲食持ち込み可、写真撮影ができるという気楽な雰囲気でした。(もちろん上演中の撮影は禁止です) 日本ではホール内での撮影も飲食も禁止されていることが多いので少し羨ましく感じました。

 さて舞台が始まるぞと意気込んでいましたが、やはりこれで一安心とはいかず、更なる困難が。

 ―舞台が理解できない。―

 もちろんそれは私の英語力の問題がほとんどですが、それにしても演出がエキセントリックで、ついていけない。なんせあの妖精パックが中年のおじさんなのです。しかもスーパーマンのようなコスプレもします。出演者はいきなり歌いだし、セットの壁を破る。しまいには出演者の不足により舞台中止のアナウンス。なんとか続行させようと私の前のお客さんが代役を務める、という仕込みまであり。ロマンチックなコスチューム劇という予想とは大きく違っていて呆然としてしまいましたが、地元の観客は大受け、大喝采の中舞台は幕を閉じました。

 観劇したLyric Hammersmith劇場の内装。

こちらが外観。駅から出るとすぐに見えるのがこの大きな電灯です。

 2日目は今回の旅行の最大の楽しみであるミュージカル「ビリー・エリオット」鑑賞。チケットは事前に日本で予約をしておき、当日に窓口で引き換えることにしました。「ビリー・エリオット」は映画「リトル・ダンサー(原題:Billy Elliot)」を元にエルトン・ジョン氏が音楽を担当したミュージカル。10年以上のロングラン公演を行っていましたが、今年の4月に閉幕してしまいました(4月15日現在)。どうしても閉幕前に観てみたいということで今回は観劇することにしました。この作品は10周年を迎えたときにライブビューイングを行い、その様子を収めた映像は世界各国で上映されました。日本でも映画館での上映後、DVD化されています。第二回高校生劇評グランプリでもこの上映を元に小林環蒔さんが「スクリーンから舞台へ」を書かれています。

 作品全体としてはバレエに目覚める少年ビリーと炭鉱夫でストライキ中の家族の物語が絡み合いながら進み、そこにエルトン・ジョン氏の美しい音楽とダンスが融合して骨太でありながらエンターテイメント性のあるバランスの良いミュージカルだと思います。また私が観た回はビリーの父役とバレエの先生役が映像と同じ役者さんで、馴染みがある安心感がありました。
 ただ意外にも実際に生の舞台を鑑賞してみると、映像で観たときのほうが作品の瑞々しさがむしろ伝わってきたようにも感じました。確かに観客の反応は日本よりも大きく、終始リラックスした雰囲気だったのは羨ましい限りですが、その分張り詰めた緊張感はなく、また映像で観たときに感動した“場面とセットの転換“もむしろ転換を重視しすぎて余韻が失われたようにも感じました。映像でカット割りや編集を付け加えることで生まれる高揚感がライブ感に勝ってしまい、生の舞台としての刺激は弱い印象を受けました。あと3秒転換を待ってくれれば、と思うシーンがいくつもあり、盛り上がりとまとまりに欠いていたのは残念なところです。また出演者の技能に関しても総じて高水準ではありましたが、日本の俳優と比べて大きな差があるとは感じず、むしろ日本の俳優の方が集中力があるようにさえ感じました。はっきり言ってしまうと日本人が演じるミュージカルというものを全ての方が受け入れているとは言い難いのが現状ですが、十分世界に発信できるだけの実力が日本のミュージカル界にはあります。改めて日本が培ってきたミュージカル界の底力を誇りに思いましたし、だからこそ日本らしいミュージカルの作り方をもっと多くの方に知ってもらいたいという気持ちを強く抱きました。

 街中で見つけたポスターです。

 上演していたVictoria Palace Thetre。工事中であまり美しくなかったのが残念です。

 子役はトリプルキャスト(三人一役)やクワトルキャスト(四人一役)が主なので、その公演に出る子役を貼り出しています。

 3日目、4日目は観光地をめぐったので観劇はしていませんが、印象的な場所を記そうと思います。3日目は日本人ガイドによる市内観光のバスツアーに参加しました。観光だけでなくバス内でのガイドの方が話してくださったロンドン事情が大変興味深かったです。ロンドン市民の生活事情や教育、そして根強く残る階級差などは現地で聞くことでより真実味が沸きました。その中でも印象的だったのはランベスという地域に訪れたことです。ランベスはミュージカル「ミーアンドマイガール」の主人公ビルの出身地で、一幕最後には「ランベスウォーク」というナンバーがあるほどおなじみの地です。 実際に訪れてみると小さなアパートがひしめき合う中で壁のいたるところに落書きがあり、その前に観光したバッキンガム宮殿の荘厳さと併せて下町育ちのビルが貴族社会に仲間入りするときに感じたギャップやそこから生まれるコメディの面白さ、作品のメッセージ性を改めて強く想いました。そんなことを考えているとなんと同じツアーに参加された方の中で財布を盗まれたという方がおり、ロンドンの影の部分を目の当たりにしました。
 観光ツアーの後はロンドンの中心街へ行きショッピングなどを楽しみました。その地域は劇場街ウエストエンドを有しており、歩いているだけでたくさんの劇場を見つけることができました。滞在期間に千秋楽を迎えた「ミス・サイゴン」や映画も記憶に新しい「レ・ミゼラブル」、その隣にある話題作「夜中に犬に起こった奇妙な事件」などなど…。日本とは違いロンドンはそれぞれの道に名前がついていて道が複雑ではないので、簡単に地図が読めるのは羨ましいものです。

 4日目にはシェイクスピア博物館へ行きました。街の中心地からは少し離れた場所にあるうえに最寄り駅から10分ほど歩かなくてはならず、少し時間を多めに用意しておいて正解でした。博物館自体はとても新しく規模も小さいので回りやすかったです。もしお時間があれば館内ツアーもおすすめです。博物館制作のオリジナルグッズも可愛らしく、関連書籍や公演のDVDの販売も行っているので演劇好きにはおすすめの観光スポットです。また併設劇場でシェイクスピア劇も上演しており、私が観劇した期間はロマンス劇を上演していました。

 短い滞在時間でしたが、楽しかったという一言ではまとめきれないロンドンの光と影を垣間見て、文化や伝統を重んじる一方でそれゆえの風通しの悪さに歯がゆささえ感じました。世界一初日が多いと言われている日本の演劇界はロングラン公演がないので定番作品が生まれづらい弊害はありますが、小劇場からミュージカルまで幅広く多彩な作品を生み出せる貪欲さもあります。安定してネームバリューを保てる演目と代謝良くラインナップが変わるシステムが共存していけるといいな、と心から感じました。(小林)                                   

おまけの写真

 大英博物館。

 ヴィクトリア&アルバート博物館。

 英国といえば紅茶、紅茶といえばここ!英国王室御用達「フォートナム&メイソン」のアフターヌーンティーです。ただ35ポンド程(日本円で5500円程度。1ポンド160円換算)するので大変な贅沢です。

 ロンドン名物フィッシュ&チップス…かと思いきやチキンです。なんとフィッシュは品切れでした。油分どころか水分まで飛んでいるので飲み物は必須です。ちなみに味付けは特にされていません。ケチャップも必須です。これだけで12ポンド(2000円程)なのでやはりロンドンは物価が高いですね。

 オイスターカードは日本でいうところのスイカやパスモのような電子カードです。