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現役高校生・大学生による
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2016年8月7日

『ミス・サイゴン』稽古場レポート

2016年9月15日(木)

 この日稽古場に伺うとまず目に入ったのがセット、そして衣装の数々。歌稽古とは違う光景に思わず驚きを隠せずにいると、セットの前に並べられた机に二人の男性が座っていました。ロンドンから来日している演出補のJP、そして振付補のBenです。その後ろの席にもたくさんの方が座って稽古を見ながら打ち合わせをしており、本番に向かって稽古が進んでいることを広い稽古場からも感じることができます。また客席からは見えないスタッフの方々の働いている姿を見ることができ、作品に関わる人や技術の多さをより実感することができました。

 稽古が始まるとまずジジ役のお二人、池谷裕子さんと中野加奈子さんが1幕初めの「我が心の夢」という曲の稽古をされていました。まず中野さんが立った状態で歌唱指導の山口さんと細かい歌稽古をします。ロンドンでも同役を演じられたことから山口さんは日本語と英語の発音の違いを説明しつつ、より中野さんの個性を引き出せる歌唱のアドバイスをされていました。
 次に実際の演技の動きを付けながら稽古をします。テーブルと椅子が運び込まれると最初に池谷さんがその椅子に座りながら演技をされます。気になる箇所があると演出補のJPがその場で止めながら役の心情や言葉の意味合いなどを説明していき、演技と修正を繰り返していきます。一通り終わるとシーンを通しての稽古をし、同じ工程を中野さんもされます。そこで何よりも驚いたのは、演出をつけながら日本語で歌い、発声のアドバイスや英語との違いを実践されているのです。その説明は分かりやすく、入念なディスカッションによりジジの役柄が深まっていく様は鮮やかでした。

 この日の稽古はもう一つのシーンを行いました。ヒロイン、キムと米兵で彼女と愛し合うことになるクリスの運命を左右する「キムの悪夢」と言われる、舞台を大人数が縦横無尽に動き、セットのゲートを人力で動かしながら物語が進む劇的な場面です。実際にゲートを動かすまでのシーンをまず稽古した後に、ゲートを動かすキャストのみが残り、動きを細かく分け段取りをゆっくりと確認していきます。動きが確認できると次はスピードを上げ、それも確認できたら音楽に合わせて動かしていきます。この工程を何度も繰り返しながらぴったりと息が合うまで綿密な稽古を重ね、一通りの確認が終わると一連の動きを音楽に合わせながら通していきます。ゲートの動きが確認できると次にその場面に出るキャストを含めてまた細かく動きを分けながら稽古を重ねていきます。迫力の舞台を生み出すためにこんなにも計算された舞台の動きが設計されていること、そして緊張感ある現場から総合芸術ともいわれるミュージカルの制作にかかる多大な労力と作り手の熱量をありありと感じました。その空気感を共に感じることができたのは私にとってもかけがえのない体験でした。

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