NeSTAロゴ

現役高校生・大学生による
舞台芸術情報サイト

2016年8月7日

『ミス・サイゴン』稽古場レポート

2016年8月23日(火)

 本稽古が始まってから初めて稽古場を訪れました。稽古場も場所を移し、とても大きなところになっていた。稽古場には本番さながらの装置が建て込まれています。キャストの方々は装置の間にヨガマットを引いて柔軟体操中。そして演出家のJP(Jean-Pierre Van Der Spuy)と振付家のBen(Benjamin Osborne)が到着すると、ピアノの音に合わせて5分ほどの発声練習。それが終わるとあっという間に稽古が始まりました。

 この日は「バックステージ・ドリームランド」からスタート。エンジニア役の駒田一さん、ダイアモンド✡ユカイさんと女性キャストたちが集結。まずはその場に立ったままでの歌稽古。JPから、「ただのコーラス隊ではない、同じフレーズの中にさまざまな意味を探そう」との呼びかけや、「パワフルな登場で自分の空間にしよう」との檄も。その後はJPとBenが女性キャストたちの立ち位置や動きを定めていきます。しかし、ただ立ち位置や動きを定めていくだけではありません。みなナイトクラブに身を置いているという設定で、与えられたその役がなぜそこにいるのか。ナイトクラブのなかでの自らのステータスはどこか。グループの中で他人とどう関わっているのか。それぞれが互いにディスカッションしながら理由付けをしていくことを求められていました。そしてそれが終わると音無し動きのみで「バックステージ・ドリームランド」。あっという間に冒頭の場面の輪郭が浮かび上がってきました。動きだけでも十分な迫力が! そしてエンジニアにも演技指導が入ります。登場シーンにエッジを効かせて、自らのステータスを誇示しようと。駒田さんがそれをやってみると、これでもかと言わんばかりにエッジが効いたエンジニアに! 一瞬で場の空気を自分のものにしてしまう役者の技を見た気がしました。ユカイさんのエンジニアも、「この役は自分そのものだ」と言っていた言葉に偽りなし、そこに立っているのはダイアモンド✡ユカイでありながらエンジニアでもあり。独特の雰囲気を醸し出していました。

 その後はキャストを入れ替えたり、衣裳替えや装置の移動のタイミングを図りながら稽古が進められました。JPからは、セリフ一言ひとことの対象は誰なのかを考えること、演じる女性の内面の深いところまで突き詰めるようにとのアドバイスが。そうしてこの日の「バックステージ・ドリームランド」の稽古は終わりました。わずか3分ほどのシーンだが、この日は3時間半かけてシーンを作り上げました。こうしたことの積み重ねで一つの作品が作られているのだと思うと気が遠くなりそうで、でもこの積み重ねあってこそ観客に感動を与える作品が作られるのだとも思います。 その後少しの休憩を挟んで男性アンサンブルたちによる「モーニング・オブ・ドラゴン」の稽古が始まりました。Benによる振付が行われ、そこにドラゴンダンサーのアクロバットも加わると、みるみると力強いシーンが完成。これには思わずBenからも「こんなに出来るなんて素晴らしい!」と絶賛の声が。

「モーニング・オブ・ドラゴン」『ミス・サイゴン』2014年公演より
写真提供=東宝演劇部

 そして稽古はこの日ラストの「テレフォン・シークエンス」へ。あっという間に電話機のセットが取り付けられて稽古開始。クリスとジョンの思惑がすれ違うこのシーン。キャストみなさんの熱演で、電話越しながらの緊迫した空気がひしひしと伝わってきました。上原理生さんが同じジョン役のパク・ソンファンさんが積極的にディスカッションしている姿に、カンパニーの輪を感じることが出来ました。そしてこのシーンはアンサンブルの動きも魅力的です。ビザの発行を求めて大使館へ集まってくる人々。ビザをもらえる人、もらえない人それぞれの背景がJPから一人ひとりに与えられていきます。それで稽古再開かと思いきや、大使館でビザの発行を待っている間きれいに整列せず、割り込んだりしてほしいとの注文が。これは、ベトナムの人々はそれほど列をきれいに作って並ばないのではということだそう。身近なシーンでもこうした些細なことにも気を配りながら作品が作られていくのですね。  

 そうしてこの日の稽古場見学は終了しました。初めて覗いたプロの現場は驚きの連続でした。どのキャストの方も一度言われたことをすぐに出来てしまう呑み込みの早さ。シーンが出来ていくスピード。演出家JPと振付家のBenが一人ひとりのキャストに的確に演出をしていくその視野の広さ。他にもたくさんの驚きがありましたがそれは別の機会に。とにかくキャスト・スタッフ問わず、選ばれし精鋭たちによってこの『ミス・サイゴン』は出来上がっていくのだと改めて実感した1日でした。(文責:石本)

1 2 3 4 5 6