NeSTAロゴ

現役高校生・大学生による
舞台芸術情報サイト

2016年8月7日

『ミス・サイゴン』稽古場レポート

2016年8月14日(日)

今回はプリンシパルキャストの歌稽古に伺いました。前回の「サイゴンスクール」とは違い、歌稽古では机がまっすぐ並べられ、前方に歌唱指導の山口さん、そして寺崎さんが座られています。同じ役のキャストが隣同士に座り、楽譜や台本、そして歌声を録音するためのレコーダーなどが机の上に置いてあります。

さて歌稽古が始まるとまず発声練習。発声練習だけでも声量に圧倒されてしまいます。椅子に座ったまま発声される方もいれば動きながら発声される方などそのやり方は様々です。集中力と緊張感に満ちた空気感はそれぞれが自分の世界の中で体と対話しているような印象を受けました。数分の発声練習だけでもプロの現場のシビアさ、志の高さを垣間見たような気持ちがしました。

 この日はプリンシパルキャストの出演シーンを中心に、細かい音程や言葉のニュアンスを確認していく作業が行われました。まずダブルキャスト、またはトリプルキャストのうちの一人が一場面を歌うと山口さんからアドバイスが入り、それを受けてもう一度同じ箇所を稽古します。次にもう一方のキャストが同じ場面を歌い、またアドバイスを受ける、という工程を各場面で行います。何よりも驚いたのはどのキャストも歌っているときから動きを加えたり、時には立ち上がって動きを加えたり、と歌だけでなく動きでも演技を歌稽古で深めようとされていることです。更に歌いながら役の輪郭が浮かび上がっていく様を目の当たりにし、思わず鳥肌が立ちました。役の心情はもちろんのこと、他の役との違いを声として表現する、という山口さんからのアドバイスも印象的でした。またキャスト間での意見交換が頻繁に行われており、同じ役同士での確認はもちろん、役を超えて一言一言のイントネーションまで確認し合っている作業から私は言葉を丁寧に扱っているような印象を受けました。日本語の一文字にも音の高低の感覚があることは新鮮な驚きであり、またひとつの作品を作る仲間としてお互いを助け合う光景はまさに仲間、人の集まりという意味を持つ“カンパニー”そのものであるように思いました。

今回の稽古で一番印象的だったのはキャストの方々の圧倒的な力量です。膨大な量の曲を覚えるだけでなくその場で修正する臨機応変さ、他の方々の歌に反応し呼吸を合わせる視野の広さ、そしてひとつの言葉、ひとつの音に対する感覚の鋭さ、今まで歌唱力という漠然とした言葉で捉えていたものの裏にもっと複雑で高度な技術と努力が隠されていたことに気づきました。これからミュージカルを観るときには私も今以上に感覚を研ぎ澄まして、音や言葉に注目しながら観劇してみたいと思います。(文責:小林)

1 2 3 4 5 6