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2017年4月14日

青年座『わが兄の弟ー贋作アントン・チェーホフ傳ー』ゲネプロレポート

 現代を生きる劇作家の新作にこだわり続ける劇団、青年座。

 そんな青年座の新作は『わが兄の弟―贋作アントン・チェーホフ傳』。

『かもめ』『ワーニャおじさん』『三人姉妹』『桜の園』などで有名なアントン・チェーホフに関する史実と想像を交えて綴られる物語。

 マキノノゾミの戯曲と宮田慶子の演出による5作目の作品である。

 会場に鳴り響く優美な音楽が緊張感をもたせ、幕が上がると、物語は20歳のチェーホフが初めて女性と“愛を交換”し朝を迎えたところから始まる。そこから、彼の生活、家族、身の回りの人々を描き出し、最終幕では彼の史実の中でも最も謎といわれるシベリアへの旅行の真相に迫っていく。

写真撮影=坂本正郁

 横堀悦夫による20歳になったばかりのチェーホフはとても愛らしく、彼の若さゆえの純粋さを印象付けさせる。また、後半に行くにつれどんどん自分の心の奥底の性質そして心の奥底に潜む人物の影に気づいていく彼の様子を丁寧に演じていく。

 作品を通し、人々の会話、関係に彼の作品の面影がちらつく。それらは「もしかして、彼はこれを元に作品を書いたのでは?」と思わせ、わくわくさせる。

 また、彼の心の奥底を、自然に普段の生活や会話の中に入れ込み、見え隠れするように少しずつ且つしっかりと私たちに見せていく。

 その様子に胸がきゅっとつかまれるような感覚を覚える。 この作品は冒頭でも述べたように、史実と想像を交えた物語。創作部分と史実部分の交え方が創作部分も本当にあったのではないかと錯覚してしまうほどの見事ぶり。

 ラストはきゅっとつかまれた胸が解放されると同時に、つかまれた感触が少し残ったような不思議な感じが余韻として広がっていく。

  最後に鳴り響く優美な音楽はチェーホフの次兄コーリャ、そしてコーリャが音楽を送ったというとある女性を思い浮かばせ、最初と違う感じがする。 そこから、次兄コーリャとそのとある女性へのチェーホフの想いに思いをめぐらせ、終わった後も彼の人生に心を添わせることができる。

写真撮影=坂本正郁

 観劇後、劇中の言葉を思い返しながら、彼の足跡をたどるかのように、私は彼が書き残した言葉たちを納めた本に手を伸ばした。彼の綴る文字たちに触れみたくなる、そんな作品でもあったと思う。

 みなさんも、劇場に足を運び、上質な舞台そして文学に心を寄せてみてはいかがでしょうか。 16日まで紀伊國屋ホールにて。お見逃しなく!(円城寺)

【公演情報】
劇団青年座 第226回公演『わが兄の弟ー贋作アントン・チェーホフ傳』
作・マキノノゾミ 演出・宮田慶子
2017年4月7日(金)~2017年4月16日(日) 紀伊國屋ホール