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2017年7月18日

青年座『旗を高く掲げよ』 稽古場レポート&インタビュー

青年座『旗を高く掲げよ』演出 黒岩 亮さん インタビュー

7月28日(金)に初日を迎え、現在大好評上演中の青年座『旗を高く掲げよ』 演出の黒岩 亮さんに、今作の見どころ、ご自身の演劇への思いなどたっぷりと語っていただきました。上演は8月6日(日)まで、東京・代々木八幡の青年座劇場にて!

撮影=NeSTA

黒岩 亮(くろいわ まこと)

1960年生まれ。青年座研究所卒業後、入団。 1989年『勇者達の伝説』(ゆいきょうじ 作)でスタジオ公演初演出。1994年『カデット』(鐘下辰男 作)で本公演初演出し、注目を浴びる。1997年秋には初めて青年座に書き下ろした永井愛氏の『見よ、飛行機の高く飛べるを』を演出し、その舞台成果は芸術祭大賞受賞となった。(青年座公式HPより)

―今回の戯曲をお読みになった感想は。

古川さんならではの、歴史の事実というものに基づいて書かれた本だと思います。劇団チョコレートケーキの作品同様に質の高い戯曲を提供していただいたと思っています。

―古川さんと組んだ理由は。

古川さんの作品は以前から拝見していて興味があったのでやりたいとずっと思っていました。今回ご縁あって一緒に作品を作ることとなりました。

―「ナチス」を題材として選ばれた理由は。

青年座の場合創作劇を中心に行っている劇団なので、作家と演出家でいろいろ話をして、どういう作品にしていくかを決めていくのがほとんどです。今回の場合は作家の古川さんと一緒に話をしていて、世界の動きの中心にあるのは移民難民の問題ではないかと。欧米のそういう流れと、第二次世界大戦前から大戦中のドイツの状況を照らし合わせてみることで興味深い作品ができるのではないかということで古川さんとお話しをした結果こうした作品になりました。

―演出の上で腐心されている箇所は。

現代のわれわれから見たナチスという表現をしないよう注意しています。当時ドイツで生きていた人々というのはナチスがなんであるのかというのはわからない、目の前にある状況だけを追っていたと思います。ナチスの行っていることに賛同している人間もいれば批判的だった思っていた人間もいたはずですが、結局ナチスはドイツ国民に受け入れられたということですよね。第一次世界大戦が終わった後のドイツはベルサイユ体制で領土が取られ、そのうえ多額の賠償金が請求されて国の経済がめちゃめちゃになっていたところにナチスが現れたわけですよね。政治家たちはほとんど無能であると思っていた国民たちを一気に吸収し、選挙によって権力握っていったという…。明日のごはんが食べられるか、仕事があるかないかという大きな問題を改善していったことに国民の意識は向き、ナチスはどんどんと支持を広げていったという経緯があります。

それを踏まえたうえで、当時のドイツの人々の意識っていうのを考えるようにしています。現在の我々の視点から見てしまうと、ドイツの国民は悪い人たち(=ナチス)に騙されたととらえることもできますが、それは少し違いますよね。大変な出来事の渦中にいる人間は未来のことはわからずに、いま目の前のことに必死になって生きるしかないのだ、ということを意識して演出するよう心がけています。

―今回の作品を演出していて思うことは。

演劇って想像力の芸術だと思っています。自分の知らない時代に行けるかどうか。それは想像力しかないですよね。舞台で演じている役者がさも見てきたかのように、さも知っているかのようにだますのが芝居だから、演じている側はふんだんに想像力を駆使していないと観ているお客さんは想像できないですよね。セリフというのは誰でも言えるんです。でもセリフって芝居じゃないですから。お客さんの想像力を喚起させてこそ演劇です。だから舞台のどこをとってもお客さんが何らかの想像力を駆使して観られることを大切にしたいと思っています。今作では1938年から戦後のドイツの世界に連れて行けるようにしたいなと。劇場はタイムマシンみたいなだと思っていますから。

―この作品を通じてお客様に持ち帰ってほしいことは。

いま、特にヨーロッパを中心に移民の排斥が進んでいます。アメリカもすごく一国主義でメキシコとの国境に壁作るなんて言っていますよね。力による物事の排除が露骨になっている世界だと感じています。「歴史に学ばぬものは愚かだ」という劇中のセリフから観客のみなさんになにかを意識してほしいなと思っています。ドイツ人はユダヤ人の人々がどこに消えたか知っていたけれど知らないふりをしていたのでは。一番いけないことは無関心でしょう。物事を知って、自分で考えてまたその物事を見つめるということがなにより大切なのではないでしょうか。そうしたことを考えるきっかけとなればと思っています。

【公演情報】
劇団青年座 第227回公演『旗を高く掲げよ』
作:古川健(劇団チョコレートケーキ)  
演出:黒岩亮  
2017年7月28日(金)~8月6日(日)  会場:青年座劇場

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