NeSTAロゴ

現役高校生・大学生による
舞台芸術情報サイト

2018年3月5日

『戯伝写楽 2018』劇評

 本作を観劇して最も考えさせられたことは、ジャパニーズミュージカルという言葉の意味である。 日本オリジナルのミュージカルというのはそこまで珍しいものではない。だが、それらの作品名の冒頭にはジャパニーズミュージカルという言葉は付いていない。本作がわざわざそのような名前で呼ばれるのは、日本人らしい感性が詰め込まれている作品だからではないかと考える。例えば小西遼生演じる歌麿の歌う曲の中に「夢を売るのが商売 粋じゃなきゃね」という歌詞がある。この「粋かどうか」という考え方は、日本独自のものであるのだ。(参照:粋(粋)とは何か?-粋の意味、本質を考えてみる- https://search.yahoo.co.jp/amp/s/accetory.jp/articles-070/amp/%3Fusqp%3Dmq331AQECAEYAQ%253D%253D ) 本作には日本画、江戸、花魁、能役者、といったテーマが出てくるが、それらが中心なのではなく、あくまでも「日本人らしい考え方」がピックアップされていたように感じた。日本の文化を紹介するのではなく、日本独特の美意識を持った人間を紹介する、それこそがジャパニーズミュージカルなのではないだろうか。

 主役の斎藤十郎兵衛演じる橋本さとしは、洒落を飛ばす軽快さと思いやりの心を大切にする情の深さをうまく両立させていた。おせい演じる中川翔子は、心の底から好きなこのをすることの楽しさが全面に表れており、その楽しそうな歌声にわくわくさせられた。歌麿演じる小西遼生は美人画の描き方を、与七演じる東山義久(栗山航とWキャスト)は画家としての心意気を最後まで曲げなかった姿に勇気をもらった。ただし、歌声の弱さを演技力や表情でカバーしようとしている出演者が数名いたところが気になった。ストーリーの展開よりも歌声の不安定さにはらはらさせられてしまったため、そこは改善してもらえるとより集中して作品を楽しめるだろう。

 また、本作は海外進出を狙っていると、とある出演者が言っていたが、そのことに関しては慎重に考えていく必要があると考えている。日本人の粋かどうかという考え方が果たして海外の観客に伝わるかどうかという不安を覚えているからだ。日本画などの歴史や文化を伝えるという役割だけを本作に担わせてしまうのは、あまりにももったいないのではないだろうか。

 ストーリーや題材よりも登場人物の思考に興味をそそられるという、私自身あまり出会ったことのないタイプの作品であった。舞台はストーリーが全てという考え方を改める良いきっかけになったといえるのだ。

(文責:久留原)観劇日=2018/2/7,11